コンテンツKPIを正しく設定するために知っておくべきKGIとKSF
はじめに:KPI設定の前に立ち止まって考えるべきこと
コンテンツマーケティングの担当になり、「KPIを設定してください」と言われても、何から手をつければ良いか迷うことはありませんでしょうか。PVや滞在時間、CV率など、様々な指標が思い浮かぶかもしれませんが、それらの指標をただ追うだけでは、コンテンツが本当にビジネス目標に貢献しているのかが見えづらいものです。
コンテンツマーケティングの効果を正しく測定し、成果を最大化するためには、単にKPIを設定するだけでなく、その上位概念であるKGI(重要目標達成指標)とKSF(重要成功要因)を理解し、これらを連携させることが不可欠です。
この記事では、コンテンツマーケティング初心者の方に向けて、KGI、KSF、KPIそれぞれの意味と関係性を解説します。そして、これらを連携させて効果的なKPIを設定し、コンテンツの成果を正しく評価するためのステップを具体的にご紹介します。この記事を読むことで、日々のコンテンツ運用が単なる作業ではなく、ビジネス目標達成に向けた明確な活動として捉えられるようになるでしょう。
KGI(重要目標達成指標)とは:最終的に何を達成したいのか
KGI(Key Goal Indicator)は、「重要目標達成指標」と訳され、ビジネスやプロジェクトの最終的な目標を定量的に示す指標です。コンテンツマーケティングにおけるKGIは、コンテンツ活動全体が貢献すべき最も重要な成果であり、売上目標、新規顧客獲得数、特定のサービスへの登録数などが挙げられます。
例えば、オウンドメディアを運営している企業のKGIとして、以下のようなものが考えられます。
- 年間売上1億円達成(事業全体のKGIの一部として、コンテンツが貢献する割合)
- 新規リード獲得数月間100件
- 特定のサービスの利用登録者数年間500件
KGIは、ビジネス全体やマーケティング活動全体の目標と連動している必要があります。コンテンツマーケティングは、このKGI達成に貢献するための手段の一つとして位置づけられます。KGIを明確にすることで、コンテンツ活動の方向性が定まり、「何のためにこのコンテンツを作るのか、公開するのか」という目的意識を持つことができます。
KSF(重要成功要因)とは:目標達成のために何が重要なのか
KSF(Key Success Factor)は、「重要成功要因」と訳され、KGIを達成するために特に重要となる要素や活動を指します。コンテンツマーケティングにおいてKGIを達成するためには、どのような状態であること、どのような活動を行うことが成功の鍵となるのかを特定するのがKSFです。
例えば、「新規リード獲得数月間100件」というKGIがある場合、そのKSFとして以下のようなものが考えられます。
- ターゲット顧客の課題解決に役立つ高品質なコンテンツを継続的に提供すること
- ターゲット顧客が情報を探しに来る検索キーワードで上位表示を達成すること
- 記事を読んだユーザーがスムーズにリード獲得フォームへたどり着けるような設計になっていること
- 既存顧客との関係性を強化し、リピートや紹介を促すコンテンツを提供すること
KSFは、KGI達成に向けた戦略の柱となる要素です。KSFを特定することで、「どのような点に注力すれば最終目標に近づけるのか」という戦略的な視点が得られます。初心者の方は、「目標を達成するためには、具体的に何が重要なんだろう?」と考えてみることが、KSFを見つけるヒントになります。
KPI(重要業績評価指標)とは:成功要因が達成されているかをどう測るか
KPI(Key Performance Indicator)は、「重要業績評価指標」と訳され、KSFがどれだけ達成されているかを定量的に示す指標です。KPIは、KGI達成に向けたプロセスや活動の進捗状況を測るための具体的な「ものさし」として機能します。
KGI達成のために特定されたKSFが「ターゲット顧客の課題解決に役立つ高品質なコンテンツを継続的に提供すること」だったとします。このKSFを測るためのKPIとして、以下のようなものが考えられます。
- 特定の課題解決記事のPV(ページビュー)数: 多くのユーザーが記事を読んでいるか。
- 平均セッション時間: ユーザーが記事をじっくり読んでいるか(コンテンツの質の一つの目安)。
- 離脱率: 記事の途中で他のページに移動したり、サイトを離れていないか。
- SNSでのシェア数/言及数: コンテンツがユーザーに価値を提供し、共有されているか。
- メルマガ登録数や資料ダウンロード数(CTAのクリック率/CVR): コンテンツが次のアクションに繋がっているか。
KPIは、KSFの達成度を測るために複数設定されることが一般的です。重要なのは、KPI単体を見るのではなく、それがどのようなKSFに紐づき、最終的なKGIにどう貢献するのかを理解することです。
KGI, KSF, KPIを連携させる実践ステップ
コンテンツマーケティングの成果を最大化するためには、KGI、KSF、KPIをバラバラに考えるのではなく、一貫した流れで連携させることが重要です。ここでは、その連携を構築するための具体的なステップをご紹介します。
ステップ1:コンテンツマーケティングのKGIを明確にする
まず、コンテンツマーケティング活動が最終的に何を達成するのか、具体的なKGIを設定します。これは多くの場合、売上や利益といった企業の主要な目標と連動しています。「とにかくPVを増やす」といった曖昧な目標ではなく、「〇〇年〇月までに、コンテンツ経由で新規顧客を〇件獲得する」「特定のサービスの問い合わせ数を年間〇%増加させる」のように、具体的、定量的、期限付きな目標を設定することが重要です。
ステップ2:KGI達成のためのKSFを特定する
設定したKGIを達成するために、どのような要素が成功の鍵となるのかを考えます。ブレインストーミングや既存データの分析、ターゲット顧客への理解を深めることなどを通じて、重要な成功要因を洗い出します。「新規顧客獲得数を増やすためには、潜在顧客に自社の製品・サービスを知ってもらうこと、信頼してもらうこと、購入を検討してもらうことが重要だ」といったように、KGI達成に向けたプロセスを分解して考えることが有効です。
ステップ3:KSF達成度を測るためのKPIを設定する
特定したKSFがどれだけ達成されているかを測るための具体的な指標(KPI)を設定します。一つのKSFに対して、複数のKPIが考えられる場合があります。例えば、KSFが「潜在顧客に自社の製品・サービスを知ってもらうこと」であれば、そのKPIとして「認知度向上に貢献するコンテンツ(ブログ記事、動画など)の総PV数」「新規ユーザー数」「特定のキーワードでの検索順位」などが考えられます。
KPI設定の際は、以下の点を意識します。
- 測定可能であること: 数値として把握できる指標を選ぶ。
- KSFと明確に紐づいていること: そのKPIを追うことで、KSFの達成度合いが判断できること。
- 担当者がコントロール可能、または影響を与えられる範囲の指標であること: 日々の運用努力で改善が見込める指標を含めること。
ステップ4:設定したKPIを継続的に測定・分析し、改善につなげる
設定したKPIを、Google Analyticsなどのツールを使って定期的に測定します。KPIの数値が目標通りに進んでいるか、KSFの達成に貢献しているかを分析します。KPIの数値が低い場合は、関連するKSFの達成が十分ではないことを意味します。どのKPIがどの程度乖離しているのかを分析し、「なぜそうなのか?」を深掘りすることで、具体的な改善策が見えてきます。例えば、「特定記事のCVRが低い」というKPIの課題が見つかれば、「記事の内容がユーザーの検討フェーズと合っていないのではないか」「CTAの場所や文言が適切ではないのではないか」といった仮説を立て、改善アクションを実行します。
具体的な例:KGI「資料ダウンロード数増加」の場合
ここでは、KGIを「特定の製品に関する資料ダウンロード数を月間20件増加させる」とした場合の、KSFとKPIの連携例を見てみましょう。
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KGI: 特定製品の資料ダウンロード数を月間20件増加
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KSF(重要成功要因):
- 製品に関心を持つ潜在顧客に、製品のメリットや活用事例を理解してもらうこと。
- 資料請求ページへの導線を最適化すること。
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KPI(重要業績評価指標):
- 製品関連ブログ記事の総PV数(潜在顧客の関心を測る)
- 製品紹介ページへの回遊率(関心を持ったユーザーが製品情報を見に来ているか)
- 製品関連ページの平均滞在時間(コンテンツをしっかり読んでいるか)
- 資料ダウンロードCTAのクリック率(資料請求への関心度と導線の適切さ)
- 資料ダウンロードページのCVR(フォームの入力負荷などを測る)
この例では、KGI達成のために「情報提供」と「導線最適化」という二つのKSFを特定し、それぞれを測る複数のKPIを設定しています。これらのKPIを追うことで、コンテンツが潜在顧客の関心を引きつけ、資料ダウンロードへと効果的に誘導できているかを評価できます。例えば、製品関連記事のPVは高いが、資料ダウンロードCTAのクリック率が低い場合、記事内容は良いが導線に問題がある、といった改善ポイントが見えてきます。
まとめ:KGI・KSF・KPI連携で成果を出すコンテンツ運用へ
コンテンツマーケティングにおけるKGI、KSF、KPIの関係性を理解し、これらを連携させて設定・活用することは、単に数値を追うだけの運用から脱却し、ビジネス目標達成に直結する効果的なコンテンツ運用を実現するために不可欠です。
- KGI: コンテンツ活動が貢献する最終目標(何を達成するのか)
- KSF: KGI達成のために重要な成功要因(何が重要なのか)
- KPI: KSFの達成度を測る指標(どう測るのか)
これらの関係性を意識し、KGIから逆算してKSFを特定し、さらにKSFを達成するためのKPIを設定するというステップを踏むことで、日々のコンテンツ活動が目標達成へと繋がっているかを明確に評価できるようになります。
ぜひ、貴社のコンテンツマーケティングにおいても、まずは最終目標(KGI)を明確にし、そこから逆算してKSF、KPIというように、連携を意識した指標設定に取り組んでみてください。これが、コンテンツマーケティングの成果を正しく評価し、次の改善につなげるための第一歩となります。